YUNO 4
【騒】
突如。
一瞬の、眩暈を覚える。
世界がモヤモヤと粘度の高い影に呑まれていく感覚。
またか。
呻き。囁き。何かを憾むような、希うような、憎むような、(鬱陶しい)、祝福するような、叫ぶような、囀るような色々な感情が、(やめてくれ)、表情が、混ぜくちゃに、なって。
聞こえない。
聴きたくない。
いったい私に、何を……。
何を期待しているんだ。
何も出来やしない、分かってるだろ?
私には何をする意思も、許しもないのに。
遠い……場所に……、あぁ……。
幽か、な、光が。
「いらっしゃい。
……アンタら、なんかコントでも仕込んでんの?」
そうやって店に入った瞬間、呆れ顔の女性従業員からそんな言葉を投げつけられる。
「コント?」
眩暈の後遺症か、微かに頭痛を覚えるのを押し殺しながら答えた。
……生憎、そのようなものを仕込んだ覚えはない、が。
「あぁ、やはりアレが騒ぎを起したのか?」
そのような扱いを受ける原因については、残念ながら見当が付いてしまうのだった。
あの粗忽者が今度はどう騒ぎを起したのか。
憂鬱な想像が、今まさに展開しようとする……
「やー、だからアンタも含めて、だってば。」
……しようとするところで、涼しいツッコミが入るのだった。
「むぅ?」
心外な。
「アレはともかく、私は何もおかしな真似をした覚えはないぞ。」
胸を張って謂れのなさを強調する。
「ついさっきナカムラの爺さんとジグザグ走法で店の前突っ走ってったのはおかしな真似じゃないって?」
したつもりが、わざとらしい笑顔で即座に返された。
「…………。
それは、なんというか。」
しかし、相変わらず見事に胡乱な営業スマイルだ。
「ま、アンタが爺さんの玩具(おもちゃ)にされてんのはいつものことか。」
ふぅ、と大げさな溜息混じりの……そういう諦めとも哀れみとも付かぬ態度は、地味に傷つくのでやめてほしい。
私は老人の暇つぶし相手の地位などに甘んじているつもりはないし、第一ヒトを「玩具」呼ばわりというのは……
いや。
「そうではなくて。
要するにアレはさっきまでここに居たんだな。」
「そうねー。
アンタが入ってくる三十秒ほど前までは。」
「……本当に『さっき』だな。
しかし、出てくるところが見えなかったが?」
店員は黙って、やや苦味がかった笑みを帯びつつ店の裏口を指差す。
半開きのまま蝶番の外れた扉が、きぃきぃと微かに揺られていた。
「あー……。」
またこんな、絵に描いたようなドタバタの残滓。
「まことに、お騒がせして申し訳ない。」
ともかく、頭を下げることしかできなかった。
「いやいや、別に良いんだけどねー。
ていうか結構すごい音立てて行ったんだけどさ。
まさか聞こえなかった?」
「……いや。」
先ほどの、黒い靄が脳裏に浮かぶ。
が、あながち愉快な心当たりでもないので、即座に掻き払う。
「おそらくちょうどその時は放心していてな。」
「放心ってアンタ……。
あっはっは、奥さんも奥さんなら旦那も旦那だわ。」
「あっはっは」とわざわざ口で言っている。
そんないかにもわざとらしい態度を見せた後、なにか思い出したらしく、今度は本当に愉快そうに笑い出した。
「いやー、もうご馳走様でしたわー。
せっかくの新婚さんだからちょっとちょっかい掛けてみたらさ、なんかものすごい勢いでお惚気聞かされちゃって。
こっちが圧倒される勢いでねー。
ゲンさんなんか胃もたれした顔でそそくさと逃げてっちゃったし。」
「…………。」
その様子を想像……したくなくとも、ありありと脳内で再生されてしまう。
今度はこちらが胃もたれしかねないので、とりあえず、そんな地獄のような状況に居合わせてしまった哀れな無骨漢に心の中で手を合わせておいた。
「そんでしばらくしたら、なんかドドドドー、って音がして。
外見たらアンタと爺さんが店の前で鬼ごっこしてるしさ。
そしたらあの子大慌て。
きゃー、たいへーん!!まだご飯の準備できてないのにー!!、って急いで清算しようとして財布見つからなくて、キャーキャーごめんなさーいって。」
頭痛が。
予期していた恐るべき事態が、どうやら起こってしまったらしい事実の再現映像として、また頭の中で繰り広げられる。
「で、別にツケで良いよーって言う暇もなく、ごめんなさい急いで帰らないとーって商品置いて駆けてった直後に、件の相方のご登場ってわけ。
テンポ良すぎるわよ、ホントに仕込んでないの?」
「事実は得てして小説より奇なるものだ。
……そんな三文コント、誰が好んで仕込むものか。」
ズキズキと痛む頭を軽く小突きながら、ため息混じりに答えた。
「まぁ、別にフィクションでもノンフィクションでも構わないんだけどね。
こういう面白いドタバタは、アタシら大歓迎よ!」
アタシ「ら」、か。
それが具体的に誰のことかは……
まぁ、聞くまでもなかろう。
「そいつは良かった。
とりあえず金は払うから、その商品は引き取ろう。」
「はいはい、お品物はこちらねー。
早く追いかけて落ち着かせてやんな。」
そう言って渡された赤い缶詰だらけの籠に、私はまた軽い頭痛を覚えるのだった。
突如。
一瞬の、眩暈を覚える。
世界がモヤモヤと粘度の高い影に呑まれていく感覚。
またか。
呻き。囁き。何かを憾むような、希うような、憎むような、(鬱陶しい)、祝福するような、叫ぶような、囀るような色々な感情が、(やめてくれ)、表情が、混ぜくちゃに、なって。
聞こえない。
聴きたくない。
いったい私に、何を……。
何を期待しているんだ。
何も出来やしない、分かってるだろ?
私には何をする意思も、許しもないのに。
遠い……場所に……、あぁ……。
幽か、な、光が。
「いらっしゃい。
……アンタら、なんかコントでも仕込んでんの?」
そうやって店に入った瞬間、呆れ顔の女性従業員からそんな言葉を投げつけられる。
「コント?」
眩暈の後遺症か、微かに頭痛を覚えるのを押し殺しながら答えた。
……生憎、そのようなものを仕込んだ覚えはない、が。
「あぁ、やはりアレが騒ぎを起したのか?」
そのような扱いを受ける原因については、残念ながら見当が付いてしまうのだった。
あの粗忽者が今度はどう騒ぎを起したのか。
憂鬱な想像が、今まさに展開しようとする……
「やー、だからアンタも含めて、だってば。」
……しようとするところで、涼しいツッコミが入るのだった。
「むぅ?」
心外な。
「アレはともかく、私は何もおかしな真似をした覚えはないぞ。」
胸を張って謂れのなさを強調する。
「ついさっきナカムラの爺さんとジグザグ走法で店の前突っ走ってったのはおかしな真似じゃないって?」
したつもりが、わざとらしい笑顔で即座に返された。
「…………。
それは、なんというか。」
しかし、相変わらず見事に胡乱な営業スマイルだ。
「ま、アンタが爺さんの玩具(おもちゃ)にされてんのはいつものことか。」
ふぅ、と大げさな溜息混じりの……そういう諦めとも哀れみとも付かぬ態度は、地味に傷つくのでやめてほしい。
私は老人の暇つぶし相手の地位などに甘んじているつもりはないし、第一ヒトを「玩具」呼ばわりというのは……
いや。
「そうではなくて。
要するにアレはさっきまでここに居たんだな。」
「そうねー。
アンタが入ってくる三十秒ほど前までは。」
「……本当に『さっき』だな。
しかし、出てくるところが見えなかったが?」
店員は黙って、やや苦味がかった笑みを帯びつつ店の裏口を指差す。
半開きのまま蝶番の外れた扉が、きぃきぃと微かに揺られていた。
「あー……。」
またこんな、絵に描いたようなドタバタの残滓。
「まことに、お騒がせして申し訳ない。」
ともかく、頭を下げることしかできなかった。
「いやいや、別に良いんだけどねー。
ていうか結構すごい音立てて行ったんだけどさ。
まさか聞こえなかった?」
「……いや。」
先ほどの、黒い靄が脳裏に浮かぶ。
が、あながち愉快な心当たりでもないので、即座に掻き払う。
「おそらくちょうどその時は放心していてな。」
「放心ってアンタ……。
あっはっは、奥さんも奥さんなら旦那も旦那だわ。」
「あっはっは」とわざわざ口で言っている。
そんないかにもわざとらしい態度を見せた後、なにか思い出したらしく、今度は本当に愉快そうに笑い出した。
「いやー、もうご馳走様でしたわー。
せっかくの新婚さんだからちょっとちょっかい掛けてみたらさ、なんかものすごい勢いでお惚気聞かされちゃって。
こっちが圧倒される勢いでねー。
ゲンさんなんか胃もたれした顔でそそくさと逃げてっちゃったし。」
「…………。」
その様子を想像……したくなくとも、ありありと脳内で再生されてしまう。
今度はこちらが胃もたれしかねないので、とりあえず、そんな地獄のような状況に居合わせてしまった哀れな無骨漢に心の中で手を合わせておいた。
「そんでしばらくしたら、なんかドドドドー、って音がして。
外見たらアンタと爺さんが店の前で鬼ごっこしてるしさ。
そしたらあの子大慌て。
きゃー、たいへーん!!まだご飯の準備できてないのにー!!、って急いで清算しようとして財布見つからなくて、キャーキャーごめんなさーいって。」
頭痛が。
予期していた恐るべき事態が、どうやら起こってしまったらしい事実の再現映像として、また頭の中で繰り広げられる。
「で、別にツケで良いよーって言う暇もなく、ごめんなさい急いで帰らないとーって商品置いて駆けてった直後に、件の相方のご登場ってわけ。
テンポ良すぎるわよ、ホントに仕込んでないの?」
「事実は得てして小説より奇なるものだ。
……そんな三文コント、誰が好んで仕込むものか。」
ズキズキと痛む頭を軽く小突きながら、ため息混じりに答えた。
「まぁ、別にフィクションでもノンフィクションでも構わないんだけどね。
こういう面白いドタバタは、アタシら大歓迎よ!」
アタシ「ら」、か。
それが具体的に誰のことかは……
まぁ、聞くまでもなかろう。
「そいつは良かった。
とりあえず金は払うから、その商品は引き取ろう。」
「はいはい、お品物はこちらねー。
早く追いかけて落ち着かせてやんな。」
そう言って渡された赤い缶詰だらけの籠に、私はまた軽い頭痛を覚えるのだった。
YUNO 3
【老先生】
道を急いでいると、橋の袂にナカムラのご隠居さんが佇んでいるのを発見した。
……また、面倒なときに厄介な人が。
運の悪いことに、目的地に急ぐためには彼の居る橋を渡らねばならない。
これ見よがしに無視して後で因縁をつけられても困るので、足運びを緩めてさりげなく通り過ぎる。
「こんにちは、ナカムラ先生。」
すれ違いざまに、最低限の社交辞令としての挨拶。
願わくば深遠な哲学にでも没頭されていて、私のことなど気にせず居てくだされば結構なのだが。
「おや、コクトウの若旦那じゃないか。
そんなに急いでどうしたね?」
生憎なことに、私の存在は彼の興味を引いてしまった模様だった。
「……えぇ、ちょっとそこまで。
緊急の用事がありまして。」
出来る限りの抵抗として、歩調を些か早めてやや焦った声色で決まり文句を吐き、いまは自分に構わないでほしい旨を力いっぱい表現しながら彼の傍を離れることにする。
すべては余計な混乱と騒乱を防ぎ、私の世間体と平穏な生活を守るため。
いまここであの厄介な老先生に捕まる訳には行かないのだ。
が。
「なぁにをそんなに慌てて。
細君に逃げられでもしたかね?」
抜き去ったはずの老人が、スッと目の前に現れる。
まるで最初からそこに佇んでいたかのような、音も立てず目にも留まらぬ移動の早業。
相変わらず物理法則に囚われないお人だ。
しかし、いまはこの老師と悠長に世間話をしている場合ではない。
タン、と音も軽やかに移動軸をずらして立ち去ることにする。
「私に細君は居りませんし、逃げられても居ません。
だいいち今は急いでいるのです。
失礼。」
しかしその言葉を言い終わるか終わらぬ間には既に、スッと音も無く先生は目の前にいらっしゃるのだった。
「おや、細君で無ければ内縁の妻かい?
随分と仲良くやってる様子じゃないか。」
負けずにタン、と進路を変える。
「ひどい誤解です。
私とアレはそのような関係ではありませんし、不躾な詮索を受ける謂れも無い。」
スッ
「おや、あんな奇麗な娘さんを『アレ』呼ばわり。
女の子をまるでモノ扱いとは恐れ入るね。
流石は泰斗さんのご嫡孫だ。」
タン
「無意味に祖父を引き合いに出さないで下さい。
そもそもアレは……」
スッ
「いやいや、本当に泰斗さんの若い頃に生き写しだよ君は。
生まれ変わりだと言っても誰も疑うまい。」
タン
「っ、それだったらなんとも有難い事ですけれどね。
生憎まだ……ぴんぴんしてますよ、あの狒々爺は。」
スッ
「うん知ってる。
ちょうどさっき本家でお茶をご馳走になってきたところだからね。」
タン
「……それは、結構なことで。
また何か、怪しい葉っぱでも、仕入れてきたんですか?
あの人は。」
スッ
「うん、なんでもオセアニアのどっかの島にしか生えていない薬草で、回春作用がどうだとか。」
タン
「……はぁ。
あの人に、一番必要ない、効果じゃないです、か。」
スッ
「いやぁ。
いつまでもこの世の春を謳歌していたいと思うのが人の情だよ。
たとえこんな年になってもね。」
タン
「それはそれは……
……あやかりたい、ものですね。」
「うん、だったら君も一杯飲んでいくかい?
少し分けてもらった葉があってね。
折角こんなところまで来て貰ったのだし。」
突如、声の発生源が前から後ろへと移り変わる。
振り向くと、ご自宅の門の前で嫌味なほどにニコニコしている先生がいらっしゃったのだった。
……やられた。
体よく世間話に付き合わされた上に、目的地を通り過ぎてナカムラ邸まで誘導されてしまうとは。
清清しいほどの、完敗。
もっとも、この人にばったり会ってしまった時点で私は既に負けていたのだろうが。
私の修行が足りないのも確かとは言えど、これだからこの先生は厄介なのだ。
「……えぇ、後ほどお伺いします。
今は少し、急いでいるので。」
「うん、騒ぎになる前に行っておあげ。
あの娘に宜しくね。」
結局、アレのせいで急いでいたのは筒抜けだったか。
最初から感づいていたのか、或いは鎌を掛けられたのかは知らないが……
「あ、コンビニに行くのなら羊羹のひとつでも買って来てくれると嬉しいかな。」
……何処まで心を読むつもりなのか、この仙人もどきは。
道を急いでいると、橋の袂にナカムラのご隠居さんが佇んでいるのを発見した。
……また、面倒なときに厄介な人が。
運の悪いことに、目的地に急ぐためには彼の居る橋を渡らねばならない。
これ見よがしに無視して後で因縁をつけられても困るので、足運びを緩めてさりげなく通り過ぎる。
「こんにちは、ナカムラ先生。」
すれ違いざまに、最低限の社交辞令としての挨拶。
願わくば深遠な哲学にでも没頭されていて、私のことなど気にせず居てくだされば結構なのだが。
「おや、コクトウの若旦那じゃないか。
そんなに急いでどうしたね?」
生憎なことに、私の存在は彼の興味を引いてしまった模様だった。
「……えぇ、ちょっとそこまで。
緊急の用事がありまして。」
出来る限りの抵抗として、歩調を些か早めてやや焦った声色で決まり文句を吐き、いまは自分に構わないでほしい旨を力いっぱい表現しながら彼の傍を離れることにする。
すべては余計な混乱と騒乱を防ぎ、私の世間体と平穏な生活を守るため。
いまここであの厄介な老先生に捕まる訳には行かないのだ。
が。
「なぁにをそんなに慌てて。
細君に逃げられでもしたかね?」
抜き去ったはずの老人が、スッと目の前に現れる。
まるで最初からそこに佇んでいたかのような、音も立てず目にも留まらぬ移動の早業。
相変わらず物理法則に囚われないお人だ。
しかし、いまはこの老師と悠長に世間話をしている場合ではない。
タン、と音も軽やかに移動軸をずらして立ち去ることにする。
「私に細君は居りませんし、逃げられても居ません。
だいいち今は急いでいるのです。
失礼。」
しかしその言葉を言い終わるか終わらぬ間には既に、スッと音も無く先生は目の前にいらっしゃるのだった。
「おや、細君で無ければ内縁の妻かい?
随分と仲良くやってる様子じゃないか。」
負けずにタン、と進路を変える。
「ひどい誤解です。
私とアレはそのような関係ではありませんし、不躾な詮索を受ける謂れも無い。」
スッ
「おや、あんな奇麗な娘さんを『アレ』呼ばわり。
女の子をまるでモノ扱いとは恐れ入るね。
流石は泰斗さんのご嫡孫だ。」
タン
「無意味に祖父を引き合いに出さないで下さい。
そもそもアレは……」
スッ
「いやいや、本当に泰斗さんの若い頃に生き写しだよ君は。
生まれ変わりだと言っても誰も疑うまい。」
タン
「っ、それだったらなんとも有難い事ですけれどね。
生憎まだ……ぴんぴんしてますよ、あの狒々爺は。」
スッ
「うん知ってる。
ちょうどさっき本家でお茶をご馳走になってきたところだからね。」
タン
「……それは、結構なことで。
また何か、怪しい葉っぱでも、仕入れてきたんですか?
あの人は。」
スッ
「うん、なんでもオセアニアのどっかの島にしか生えていない薬草で、回春作用がどうだとか。」
タン
「……はぁ。
あの人に、一番必要ない、効果じゃないです、か。」
スッ
「いやぁ。
いつまでもこの世の春を謳歌していたいと思うのが人の情だよ。
たとえこんな年になってもね。」
タン
「それはそれは……
……あやかりたい、ものですね。」
「うん、だったら君も一杯飲んでいくかい?
少し分けてもらった葉があってね。
折角こんなところまで来て貰ったのだし。」
突如、声の発生源が前から後ろへと移り変わる。
振り向くと、ご自宅の門の前で嫌味なほどにニコニコしている先生がいらっしゃったのだった。
……やられた。
体よく世間話に付き合わされた上に、目的地を通り過ぎてナカムラ邸まで誘導されてしまうとは。
清清しいほどの、完敗。
もっとも、この人にばったり会ってしまった時点で私は既に負けていたのだろうが。
私の修行が足りないのも確かとは言えど、これだからこの先生は厄介なのだ。
「……えぇ、後ほどお伺いします。
今は少し、急いでいるので。」
「うん、騒ぎになる前に行っておあげ。
あの娘に宜しくね。」
結局、アレのせいで急いでいたのは筒抜けだったか。
最初から感づいていたのか、或いは鎌を掛けられたのかは知らないが……
「あ、コンビニに行くのなら羊羹のひとつでも買って来てくれると嬉しいかな。」
……何処まで心を読むつもりなのか、この仙人もどきは。
YUNO 2
【ハジマリと、おかいもの】
「ウマレル……ウマレ」煩い。
再び落ち込みかけた意識を、無理やりにでも覚醒させる。
あぁ、漸く、一日が始まるのだ。
窓の外は、真っ暗な、セカイ。
壁掛け時計を見ると5時の少し前あたりを指していた。
いつもより一時間以上も早い目覚めのようだ、忌々しいコドモたちめ。
ふぅ。
ベッドを降り、部屋を出て、顔を洗い、寝癖を整え、また寝室に戻って、服を換える。
何事もない一連の起床動作。
寝惚けて居たって出来る、反射的単純作業。
願わくば今日も、何事もない一日であるといいのだが。
最後にもう一度髪を整えて、階段を降り、キッチンルームへと至る。
「お早う。」
返事は、ない。
いつもなら、あの変に律儀な同居人が既に食事の支度を始めている筈なのだが。
と、軽く見渡したところで冷蔵庫のホワイトボードが目に入る。
『コンビニまでおかいものに行ってきます。
30分もあれば戻れると思います。』
私が予定より早く起き出してくる可能性を考慮して、こんなメモを残す。
やはり律儀な奴だ。
こんな早く目覚めることなど、滅多に無いというのに。
いや、むしろアレと同居するようになってからは一度も無いような気がする。
寝坊したことなら、何度と言わずあるのだが。
さて。
30分、というのがいつの時点から30分なのかは分からないが……しかし、私が置き出せばあの律義者は耳聡くそれに気づくだろう。
それに、玄関を出入りすれば私も気づく……はずだ。
もっとも、寝惚けた自分の聴力がどれほど信用できるものなのか、とか、そもそも勝手口から出られたら二階までは音が聞こえないし、とか色々と問題はあるのだが。
まぁ、いずれにせよ私が顔を洗いに部屋を出る以前に家を出て行ったことになる、はずだ。
時計を見る。
5時13分。
そうなると、遅くともあと15分もすれば帰ってくるはずだ。
あの超が付くほどの律義者が、指定した時間を越えることがあるとは思えない。
が、そこでキッチンテーブルの上の財布に気づく。
これがここに有っては、買い物を済ませても支払うべき料金を持ち合わせていないことになる。
それは、かなり、困る。
お金を払う側も受け取る側も困るだろうが、何より私が困る。
なにしろ、あの慌て者でもある律義者はきっとその程度のことで間違いなく大騒ぎする。
その醜態は瞬く間に広められ、またご近所さんの生暖かい視線を浴びるネタが増えることになるのだ。
それは、本当に、困る。
仕方ない。
私が急いで、近所のコンビニまで約5分。
その道をあの暢気者は10分かけて歩き、店に入ってから5分ほど店員と話し込み、さらに5分かけて商品を選び、そして漸く代金を支払うと考えれば……ギリギリ、間に合う可能性もあるか。
ギリギリ、間に合えば、いいのだが。
「まったく……」
ぼやきながら私は財布をポケットに押し込み、勝手口から駆け出して行くのだった。
「ウマレル……ウマレ」煩い。
再び落ち込みかけた意識を、無理やりにでも覚醒させる。
あぁ、漸く、一日が始まるのだ。
窓の外は、真っ暗な、セカイ。
壁掛け時計を見ると5時の少し前あたりを指していた。
いつもより一時間以上も早い目覚めのようだ、忌々しいコドモたちめ。
ふぅ。
ベッドを降り、部屋を出て、顔を洗い、寝癖を整え、また寝室に戻って、服を換える。
何事もない一連の起床動作。
寝惚けて居たって出来る、反射的単純作業。
願わくば今日も、何事もない一日であるといいのだが。
最後にもう一度髪を整えて、階段を降り、キッチンルームへと至る。
「お早う。」
返事は、ない。
いつもなら、あの変に律儀な同居人が既に食事の支度を始めている筈なのだが。
と、軽く見渡したところで冷蔵庫のホワイトボードが目に入る。
『コンビニまでおかいものに行ってきます。
30分もあれば戻れると思います。』
私が予定より早く起き出してくる可能性を考慮して、こんなメモを残す。
やはり律儀な奴だ。
こんな早く目覚めることなど、滅多に無いというのに。
いや、むしろアレと同居するようになってからは一度も無いような気がする。
寝坊したことなら、何度と言わずあるのだが。
さて。
30分、というのがいつの時点から30分なのかは分からないが……しかし、私が置き出せばあの律義者は耳聡くそれに気づくだろう。
それに、玄関を出入りすれば私も気づく……はずだ。
もっとも、寝惚けた自分の聴力がどれほど信用できるものなのか、とか、そもそも勝手口から出られたら二階までは音が聞こえないし、とか色々と問題はあるのだが。
まぁ、いずれにせよ私が顔を洗いに部屋を出る以前に家を出て行ったことになる、はずだ。
時計を見る。
5時13分。
そうなると、遅くともあと15分もすれば帰ってくるはずだ。
あの超が付くほどの律義者が、指定した時間を越えることがあるとは思えない。
が、そこでキッチンテーブルの上の財布に気づく。
これがここに有っては、買い物を済ませても支払うべき料金を持ち合わせていないことになる。
それは、かなり、困る。
お金を払う側も受け取る側も困るだろうが、何より私が困る。
なにしろ、あの慌て者でもある律義者はきっとその程度のことで間違いなく大騒ぎする。
その醜態は瞬く間に広められ、またご近所さんの生暖かい視線を浴びるネタが増えることになるのだ。
それは、本当に、困る。
仕方ない。
私が急いで、近所のコンビニまで約5分。
その道をあの暢気者は10分かけて歩き、店に入ってから5分ほど店員と話し込み、さらに5分かけて商品を選び、そして漸く代金を支払うと考えれば……ギリギリ、間に合う可能性もあるか。
ギリギリ、間に合えば、いいのだが。
「まったく……」
ぼやきながら私は財布をポケットに押し込み、勝手口から駆け出して行くのだった。
こさんきどりまじうぜー
えー、本日は水無月すう先生の単行本「へ〜ん・しん!!」について信者らしく発狂気味にレビューを行う
予 定 で し た が
ちょっと重大なニュースが飛び込んできてしまいましたのでそっちの話を
なんと「そらのおとしもの」アニメ化ですよ!
素晴らしいですね!!
めでたいですね!!
予 定 で し た が
ちょっと重大なニュースが飛び込んできてしまいましたのでそっちの話を
なんと「そらのおとしもの」アニメ化ですよ!
素晴らしいですね!!
めでたいですね!!
[More...]
情報倫理問題について、思いつきメモ
マジコンやファイル共有など、際限のない情報複製を諌める法も倫理も現在存在しない、という件について
このままでは近々、情報バブルの崩壊、「情報技術」という楽園神話の終焉を迎えることは想像に難くない
そのような惨事を避けるために、対処策を概察する
「倫理」というものは短時間で作られ、普及して物事を治めるようなものではないので
(比較的)即効性のある対処として、法的な対処を中心に思考するならば……
(所詮素人の思いつきなので、もっと専門的な分野において既に高度な議論が交わされてあるものの後追いに過ぎないと思われる
そのような立場からの意見を求む)
・物質的なもので情報を縛れないなら、情報に対しては情報で縛るしかないのではないかという観点から
「自らが生み出した情報と同程度の情報を享受する資格を得る」情報通貨的なものを妄想してみたが
「情報」の価値をどう判断・定義するかとか
そのシステムを誰がどう管理するかとか、どう強制力を持たせるかとか
普及させるための細かな詰めを考え出したら面倒になって考えるのをやめた
・あるいは情報そのものに、濫りな複製を阻害する因子を埋め込むことを法によって義務付ける
それによって、情報そのものに対して通貨的な管理を行うことが可能になる
もちろんその因子自体が(現在のように)簡単にあしらわれてしまうものでは困るので、その開発・管理には国あるいはそれに準ずる公的機関が関わるべき
(現実の通貨と同じレベルで管理を行い、それに纏わる罰則に対しても同程度になるよう法整備を行う)
いずれにせよ
現行の法体制や民間レベルの対策ではどうしようもない段階にいま陥っているとするならば
この問題に対しては国家レベルで真摯に取り組むしかないと思われる
……もっとも、現状において各人の倫理的処置が施されるならば
それに越したことはないのだが
(PC内のやばいファイルを自ら削除しながら)
ネット上の立場から世論を形成して、違法な情報利用を抑止する倫理的風潮を作れればさらに良し
それぞれが自警的に違反者を駆逐し、取り締まる流れがつくれれば最高だが
さすがにそれは高望みにもほどがある
(私にもそんな気概はない)
このままでは近々、情報バブルの崩壊、「情報技術」という楽園神話の終焉を迎えることは想像に難くない
そのような惨事を避けるために、対処策を概察する
「倫理」というものは短時間で作られ、普及して物事を治めるようなものではないので
(比較的)即効性のある対処として、法的な対処を中心に思考するならば……
(所詮素人の思いつきなので、もっと専門的な分野において既に高度な議論が交わされてあるものの後追いに過ぎないと思われる
そのような立場からの意見を求む)
・物質的なもので情報を縛れないなら、情報に対しては情報で縛るしかないのではないかという観点から
「自らが生み出した情報と同程度の情報を享受する資格を得る」情報通貨的なものを妄想してみたが
「情報」の価値をどう判断・定義するかとか
そのシステムを誰がどう管理するかとか、どう強制力を持たせるかとか
普及させるための細かな詰めを考え出したら面倒になって考えるのをやめた
・あるいは情報そのものに、濫りな複製を阻害する因子を埋め込むことを法によって義務付ける
それによって、情報そのものに対して通貨的な管理を行うことが可能になる
もちろんその因子自体が(現在のように)簡単にあしらわれてしまうものでは困るので、その開発・管理には国あるいはそれに準ずる公的機関が関わるべき
(現実の通貨と同じレベルで管理を行い、それに纏わる罰則に対しても同程度になるよう法整備を行う)
いずれにせよ
現行の法体制や民間レベルの対策ではどうしようもない段階にいま陥っているとするならば
この問題に対しては国家レベルで真摯に取り組むしかないと思われる
……もっとも、現状において各人の倫理的処置が施されるならば
それに越したことはないのだが
(PC内のやばいファイルを自ら削除しながら)
ネット上の立場から世論を形成して、違法な情報利用を抑止する倫理的風潮を作れればさらに良し
それぞれが自警的に違反者を駆逐し、取り締まる流れがつくれれば最高だが
さすがにそれは高望みにもほどがある
(私にもそんな気概はない)

